【書評】『自分の運命に楯を突け』岡本太郎

岡本太郎にはなれない。

感銘を受けて、私もスジを貫きたいと思う。
でも岡本太郎にはなれない。

凄味が違う。
当たり前だけど受け止めずらいなぁと思う。
それでも岡本太郎の書き残した文章から、自分と向き合う勇気を貰える。

「逆境こそがいいんだ」と繰り返し語る岡本太郎の思想に傾倒するだけでも、少し強くなれる気がして大好きなのだ。

『自分の運命に楯を突け』は1979年から1981年にかけて『週刊プレイボーイ』で連載された「にらめっこ問答」をベースに再構成したもの…とのこと。
自分が生まれる前の時代、若者に語った言葉。

でも悩みや苦しみの原因なんて、何年経とうがそう変わらない。

処世術の真逆を諭す内容がこんなにも心強い。
「最悪だな」って時に、「最悪だからこそいいんだ!」なんて言ってくれるのは岡本太郎しか私は知らない。

"成功しないように成功しないように"

今の社会では、会社の中でもそうだけど、真実のことを言ったりしたりしたら、絶対に受け入れられないと思った方がいい。(中略)
それでも、もし生きがいをもって生きたいと思うなら、人に認められたいなんて思わないで、自分をつらぬくしかない。でなきゃ自分を賭けてやっていくことをみつけるのは不可能だ。

『自分の運命に楯を突け』より引用

社会に出たら確実にぶち当たる、人間関係の壁。

職場での顕著な上下関係。
伝わらない、理解されない意見。
理不尽な仕打ち。

それでも堪えて、時には笑顔を張り付けて、上手に付き合う。
そうしなければならない場面は必ずある。

なんでも反発すればいいってもんじゃない。

でも、反骨心は忘れずにいたいと思う。
「なんだちくしょう!」って心底思って、バネにできる根性が欲しい。

現実にはうまくいかないけど。

たいてい「どう見られているか」「後に響くんじゃないか」と考えて尻込みしてしまう。
実際、予想通りだ。
嫌な予感は当たって、批判にさらされ、疎まれる。

それを推奨するわけではなくて、どうにもならずにそんな状況に陥った時に…
自分を責めたりクヨクヨせずに、岡本太郎の言葉を見ると、闘志を燃やせるんじゃないだろうか。

 "音痴の会をつくってふんぞりかえって歌うんだ"

ひとつ、いい提案をしようか。音痴同士の会をつくって、そこでふんぞりかえって歌うんだよ。それも音痴同士がいたわりあって集うんじゃだめだ。得意になってさ。しまいには音痴でないものが、頭を下げて音痴同好会にいれてくれと言ってくるくらい、堂々と歌いあげるんだ。
歌にかぎらず、人生にはこういうふうに平気で自分の運命に挑み、闘っていく姿勢が大事なんだよ。

『自分の運命に楯を突け』より引用

岡本太郎らしくて、茶目っ気を感じるこの話が好き。

自分がどちらかというと、人の目を気にしてしまう見栄っ張りなタイプだから、ユーモラスな状況にほんのり笑ってしまいつつ、反面身につまされる。
カラオケだって自信がなければ先に「あんまり知らないんだけど」とか言って保身に走るし、声が出ないようなら1番で消してしまう恥ずかしがり屋なもので。

この引用部分の前に、テレビの企画で岡本太郎が作曲の依頼がきた話があるのだけど、唸り声を録音してアレンジした…という、なんとも「らしい」曲が出来上がった様子が書かれている。
およそ「生命力」を表現させたら右に出るものはいないんじゃないかと感嘆した。

恥ずかしさや擦り込みのモラル。
子供のころから繰り返し自分を縛りつけてきた規制を外す…
この本にはマインドロック解消のヒントが詰まっていると思う。

まとめに

改めて、岡本太郎にはなれない。
こんなに純粋を保ってつらぬき通すのは、本当に生半可な気持ちじゃできない。

でも生涯それを貫き通した前例が『ここ』にあるのだから、ちょっと頑張ってみようかなって思える。

なんでも器用にこなして、上手に世渡りする人間がもてはやされる現代です。
違和感を感じるなら、それに慣れ合う自分を辛く思った時には、何度でも読み返す。

闘うのは外の世界ではなく自分自身だ。

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